
ラボ(仕事場)
立体音響のデモ、音響システム&プログラム開発、実験、作品制作など、様々な作業を行う仕事場です。
長く提唱している8chキューブ配置(下層4ch+上層4ch)のスピーカーシステムとヘッドフォンでのモニタリングであらゆるサラウンド作品の制作とリスニングが行えます。
なぜ、8chキューブなのか?
普段、人は前後左右上下あらゆる方向から音を浴びていますが、その状態を作るのに最もスピーカー数が少ない配置が8chキューブになります。
そしてこの配置が、あらゆる方向に音像を置く、動かす、包み込みと言ったことが容易に行え、Ambisonicsにおいても無理なくデコードが行えるなど、自然な立体音場生成に適しています。
よって、臨場感、没入感は通常のサラウンドフォーマットでは得られないものがあります。
このバランスの良いスピーカー配置を使い、5.1chや5.1.4ch、あるいは22.2chと言ったあらゆるサラウンドフォーマットを、スピーカー配置を変更することなくリスニングできるようプログラムされた大変柔軟なシステムとなっています。
この8chキューブを基準にすることで、必要であればスピーカー数を増やす、配置を変える、と言ったシステム構築の判断が正しく行えます。
フロントセンターやフロントL/Rは、必要な時だけ追加されるチャンネルであり、この仕事場でのメインモニターは8chキューブなのです。

基本的にMADIのシステム構成です。
Dante、AVBは主に現場対応用として完備。
スピーカーのCODA D5-Cubeはコンパクトな同軸2Wayで、キューブ型のエンクロージャーにより上下左右均一に音が広がる。それは立体音場生成には重要。
スタジオ用のニアフィールドモニターまでの音質ではありませんが、マルチチャンネル再生であることで補われる部分もあり、インスタレーションなど広めのスペースではハイパワーである必要もある。そうした意味でバランスの取れたスピーカーです。
HPLのバイノーラルモニタリングでは、SHURE SRH840を最近メインのヘッドフォンとして使用しています。

通常のスタジオにある様なミキシングコンソールなど、音の邪魔になるものは使いません。リスニングエリアはシンプルです。
カーペット中央の丸椅子がリスニングスポット。
全方位の音を聴くために、椅子は背もたれの無い回転式。
ボトムL/RとトップL/RのD5-Cubeがそれぞれリスニングスポットを向く。
フロントL/Rのスピーカーから音を出すことは滅多にありません。
ただしフロントL/Rのスピーカーが鳴っているような音は8chキューブで出します。

ボトムとトップのD5-Cubeの配置関係はこちらの写真の方が分かると思います。
この様にすべてのスピーカーが中心を向き、リスニングスポットの直径1m程度の範囲で均一な立体音場が得られるように調整されています。(カーペットが約2mx2m)
壁に横一列で並んだ長方形のパネルは、高性能な吸音パネル「SHIZUKA Stillness Panel」で、前面と側面にも設置。天井の拡散体「Vicoustic Multifuser DC2」と合わせて適度な吸音&拡散を行っています。

MADIとDanteが混在する現場に対応するため、いち早くMVR-64 multiverterを導入。
パワーアンプのCT4150はファンレスなので、繊細な立体音場生成に向いています。

メインのソフトウェアは、Plogue BiduleをプラットフォームとしたVSTプラグインの組み込みシステムで、Cycling'74 Max等との連動により、案件ごとに異なる様々な音声信号処理をカスタマイズ対応しています。
上図はデモ用のセットアップ。
Ambisonicsの録音素材、8chキューブで制作されたデモ音源、22.2ch音源、3Dパンニングなどが試聴できます。
このアコースティックフィールドの仕事場を出張し、広く立体音響の基礎を知る目的で、2020年8月12日~16日の5日間、RITTOR BASEにて「立体音響ラボ」を開催しました。
5日間のアーカイブがRITTOR BASE YouTubeチャンネルで公開されていますので、是非ご視聴ください。
ワークショップ、トークセッション、立体音響作品制作&発表と、多彩なゲストをお招きして大変濃い内容となっています。
RITTOR BASE YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCnr3mMU99UNilCSC3xkMPJg