過去に扱っていた立体音響用の製品が生産終了した後、1年掛かりでそれに替わる製品を探し、新たな立体音響用プロセッサーを取り扱うことになりました。
イタリアのA&G SOLUZIONI DIGITALI社が開発した、8chのDSPボックス「X-Spat boX™」です。
製品の詳細はX-Spat boX™製品ページをご覧いただくととして、今回は立体音響用のプロセッサーとは何なのかを、立体音響とサラウンドの違いに視点をおき解説したいと思います。
「サラウンド」という言葉は「囲む」という意味であり、リスナーを囲むような音場を作り出すという意味で、サラウンドも立体音響の一部です。
しかし一般的にサラウンドと言えば、5.1chに代表されるようにチャンネル構成が規格化されたものを指していますので、当サイトでも同様の扱いをすることにしています。
5.1chのサラウンドはご存知の通り、L/C/R/Ls/Rsとサブウーファーの6本のスピーカーで再生することを前提としています。
あくまでも前方のL/C/Rをメインに考え、前後方向への音の定位やパンニング、臨場感などを効果的にするLs/Rsを加えたフォーマットです。
そのスピーカー配置を見ても分かるように、リスニングポイントには確実に前方/後方/左/右と言った音場の向きが存在します。
リスナーはCスピーカーに正確に対面しないと、特に音楽素材ではサラウンドのバランスが崩れ、かえって聴きづらい結果となってしまうこともあります。
一方、当サイトで立体音響と位置付けているものは、再生システムのチャンネル数が固定されていません。
リスニングエリアや部屋の大きさと言ったリスニング環境と、再生するコンテンツによってスピーカーの台数と配置を決めます。
例えば、ATAKの「filmachine」というサウンドインスタレーションでは、10m四方の部屋で上/中/下の各層に8スピーカーずつ計24台のスピーカーを使用し、トヨタ社のドライビングシミュレーターでは、車内の狭いスペースに4台のスピーカーを使用していますが、どちらも同時に複数の音源を3D空間定位させる立体音響システムです。
また、立体音響の場合は、そのスピーカーに囲まれたリスニングエリアにおいて、サラウンドのような前方/後方/左/右と言った音場の向きは存在しません。 実世界同様、自分が向いている方向が前方となります。
他にもサラウンドと立体音響の大きな違いがあります。 パンニングです。
サラウンドで一つの音を、L→C→Rとパンニングして行けば、その音はLスピーカーの位置からRスピーカーの位置へ移動したように聴こえます。
分かりやすい例で、1台の車が自分の前を左から右へ横切ったように聴こえるパンニングを試みたとしましょう。
左から右へ50m位、車が移動したように音を動かしたい所ですが、サラウンドのパンニングではLとRのスピーカーの距離しか音は動きません。
それが3mなら3mしか動かせないことになります。 音量や残響の調整により距離感を出すことが出来ますが、L/Rスピーカーの角度60度という範囲を超えて音を左右に振ることはできません。
Ls/Rsのスピーカーを補助的に使用しても限界があり、上手く聴こえるようにするにはミックスのテクニックが必要となります。 つまりそれらしく聴こえるように作りこまないといけないので、インタラクティブな使用には不向きです。
立体音響の場合、ある任意の空間にスピーカーの位置と音源の位置を座標(X,Y,Z)で定義するようになっており、それらのリスニングポイントにおける音響計算を行ったパンニングが自動でなされるので、図のようにスピーカー配置の外側で音を移動させることができます。 長い距離をパンニングすることができるので、車を左から右へ通過したように表現することが無理なく容易にできるわけです。
また、上層や下層にスピーカーを配置することにより、上下の音の移動も表現することができます。

任意のスピーカー配置において音の定位が自由ということは、5chのサラウンド素材を4台や8台のスピーカーで再生することも可能です。
サラウンド配置の各スピーカー位置を音源位置と考え、空間に5つの仮想L/C/R/Ls/Rsを定位させればよいのです。
これはサラウンドミックスされた素材を、様々な環境で再生することに適しています。
このように、リスニング環境によって自由にスピーカー配置を調整でき、その中で自由な音の動きや臨場感ある音場の生成が行えるものを、立体音響システムと位置づけて当サイトでは紹介しています。
その立体音響用のプロセッサーが「X-Spat boX™」です。
